遺言書の作成には、民法で定められたルールがあります。それらを順守しなければ、せっかく残した遺言書が無効となってしまいます。 無効となってしまえば、遺言者の方の遺志が伝わらないばかりか、紛争の原因にもなりかねません。 法律に則り執行できる遺言書の作成には、プロである弁護士の力を借りることをおすすめします。
遺言書がない場合の相続では、相続人が一同に会し、全員の意見を一致させなければなりません。しかし、遺言書を作成することによって、ご自身の財産を残す人を指定したり、 分配方法を指定したりすることができます。また、遺言書による指定があれば、遺産分割協議を行う必要がなく、遺言書通りの内容で遺産の分配ができますので、相続手続きがスムーズになります。
遺言書で希望する分配方法および分配割合を記載しておくことにより、ご自身が望む通りの内容で相続させることが可能となります。 相続人の中でも、お世話になった人に多く渡したいといったご希望も叶えることが可能になります。
通常は、法定相続人でない内縁の妻や、ご自身の子供の配偶者、生前お世話になったお知り合いの方などには財産を残すことはできません。 しかし、遺言書を作成しておくことにより、相続人でない人に対しても財産を残すことが可能になります。
自筆証書遺言とは,その名の通り、遺言者が文章、日付及び氏名のすべてを自筆で書き、押印することにより作成する遺言のことです。 重要な注意事項として、パソコン(ワープロ)等で作成され印刷されたものや、第三者が代筆したものは無効となります。 自筆遺言書は封をせずとも構いませんが、封がしてある場合には、開封に当たり家庭裁判所での検認手続が必要となります。
証人や費用がかからないため、手軽に作成することができますが、証人がいないがため、遺言書が発見されずに遺産分割協議が行われたり、 発見した相続人に対して不利益な内容であった場合に、隠匿や破棄される恐れがあります。また、手軽に作成できてしまう反面、相続人に強制的に書かされてしまう可能性もあります。
さらに、自筆遺言書の場合には、相続発生後に相続人が管轄の裁判所に出向き、検認の手続きを受ける必要があり、相続人全員が出席のうえで開封・確認作業を行うなど、 相続人の方に煩雑な作業を要する形式になります。
公正証書遺言とは、公証役場で作成する遺言書のことです。証人2名が立会いのもと、遺言者が遺言の内容を公証人の面前で読み上げ、その内容を公証人が代筆します。 それを、公証人の口から遺言者と証人2名に読み聞かせ、遺言者と証人2名が内容を承認し、各人が署名・押印し、最後に公証人の署名・押印をして完成となります。
公正証書のメリットとして、原本が公証役場に保管されることになるため、相続人による隠匿、破棄及び変造が不可能だという点です。また、公証人が作成しているため、 趣旨が不明瞭や形式不備を理由に無効になることはまずありません。
ただし、公正証書の作成には、事前に作成する遺言書の文章構成を練る必要があります。いろいろなお気持ちを書き記したい遺言者の方が、公証役場での限られた時間で思いをまとめるのは容易なことではありません。 また、証人に関しても、ご友人に依頼するにも気軽に頼める内容ではありませんし、親族の方であればその方から内容が漏れてしまうかもしれません。
こうした場合には、事前に弁護士に遺言書の文言について作成を依頼し、十分な打ち合わせを行い、原稿を作成したうえで公証役場に出向くのが良いでしょう。 証人についても、弁護士に依頼しておけば、弁護士事務所で証人を用立ててくれることもありますので、証人から内容が外部に漏れる心配はありません。
上記の理由から、遺言書作成には、弁護士に依頼したうえで最終的に公正証書として残すのが一番の方法だと考えます。
秘密証書遺言とは、自筆証書遺言と同様に、ご自身で書面を作成し署名・捺印したうえで封印し、その封書を公証役場に持参し、必要な手続きをとり作成する遺言書のことです。 秘密証書遺言であれば、遺言の存在は明らかにしたうえで、内容を秘密にして遺言を保管することができますが、公正証書遺言のように公証人が遺言内容を確認するわけではありませんので、 自筆証書遺言と同様に、形式不備等により無効になる可能性もあります。また、公証役場に持参し作成しますが、公正証書遺言のように公証役場に保管されるわけではありませんので、 紛失する恐れもあります。また、自筆証書遺言と同様に、検認の手続きを受ける必要もありますので、相続人の方に煩雑な作業を要する形式になります。
≪遺言書を作成するうえでの注意点≫
前述のとおり、遺言書を作成しておけば遺言者の遺志が尊重され、紛争の回避に繋がる有用な方法となり得ます。しかし、気を付けておかなければいけない重要な点があります。 それは、相続人には遺留分という法律で定められた最低限の取り分が守られているということです。(遺留分については、遺留分のページをご覧ください)
この遺留分を考慮せず、ただ思いのままに遺言書を作成してしまうと、残された遺産を受け取る方が、相続人でありながら財産を残してもらえなかった方から、 遺留分減殺請求を受けるなど、思わぬ紛争に巻き込まれる可能性が高くなります。
こうした点を踏まえ、遺言書の作成にあたっては、遺言書作成のプロである弁護士に任せてしまうのが一番だと考えます。
当事務所では、自筆証書遺言、公正証書遺言ともに、原案の作成依頼を承っておりますので、遺言書の作成で悩まれている方は、お気軽にご相談ください。